私は野球にはまったく興味がなくて、「タッチ」も実はほとんど観たことがない。
それなのに、「タッチ」の歌はどれも大好きで、ソング集CD(3枚とも!)を全部揃えるほど夢中になっていた。

ずいぶん後になってから、あの楽曲たちが、チェッカーズの生みの親とも言える売野雅勇・芹澤廣明コンビによるものだと知って、「ああ、だからか」と深く納得した覚えがある。

なかでも、映画「タッチ 背番号のないエース」の主題歌である《背番号のないエース》は、聴くたびにいろいろ考えてしまう歌だ。
少年2人と少女1人の三角関係を描いた内容で、主人公の少年は、片想いを終わらせることを決意する。とても切ないストーリー。

「タッチ」の劇場版主題歌ということもあり、あの主要キャラ3人を彷彿とさせる楽曲なのだけれど、私がいつも気になってしまうのは“少女の気持ち”のほう。

部室(ロッカー室)の伝言板に少女の名前を書きかけて、ふと気づくと、後ろには俯いている少女がいる。
少年は、何を書こうとしていたのだろうか。

たぶん、誰もいない部室で彼女への想いを書き綴り、こっそり消して帰ろうとしていたのだと思う。
少女もそれを察して、俯いてしまった。
このとき、少女は——期待していたのか、それとも戸惑っていたのか。

最終的に少年は、消すはずだった「好きだ」という言葉の代わりに、「あいつのことをヨロシク」と書く。
それを見た少女は、走り去ってしまう。

私は当時、この少女の気持ちを「裏切られた失望」だと感じていた。
主人公が好きで、「好き」と書かれることを期待していたのに、よりによって「あいつをよろしく」なんて——。
その言葉に背を向けて、少女は「あいつ」と言われた少年とキスを交わす。

両片想いのすれ違い。
歌詞の最後にある「僕たちが逸れてく」という一節が、それを象徴している気がしてならなかった。

たぶん、この解釈で間違ってはいないと思う。
でも、最近は、少女の“本当の気持ち”について、もう少し違う見方もできるのではないかと考えるようになった。

少女は、もしかしたら2人の少年どちらにも惹かれていたのかもしれない。
どっちも好き。どちらか一人なんて、選べなかった。
そして、伝言板の文字を見たとき、「その気持ちが見透かされてしまった」と感じたのかも。

見破られた。
気づかれた。
そして、嫌われた。

そう思って、もう一人の少年のほうへと逃げるように向かった——そんな可能性も、あるような気がする。

また別の見方では、これは本当に一方通行の片想いだったのかもしれない。
少女はずっと「あいつ」のことが好きで、主人公の想いには気づいていたけれど、気づかないふりをしていた。
そして、両想いになった「あいつ」との関係が動き出すなか、主人公は何も言わず、最後の強がりとしてあの言葉を残した——。

正しい解釈なんて、歌にはない。
でも、いろいろなパターンを想像できるからこそ、私はこの歌が忘れられない。

どの解釈であれ、これは切ない片想いの青春ソング。
今でもふと聴いたり口ずさんだりすると、不思議と観てもいないはずの「タッチ」の情景が浮かぶとともに、10代の青くて甘酸っぱい青春への郷愁がこみ上げてきて、胸がキュンとしてしまう。
2025.06.11 11:49 | pmlink.png 固定リンク | folder.png アニメ | com.gif コメント (0)
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